どうしても作りたかったSaint Crispin’s Derby whole cut
最大の特徴はここ
ダービーなんです
でもいわゆるワンピース(タンの部分が大きいのはご愛敬)ホールカットなんです!
ここに辿り着くまでには結構苦労しました
実は一度ダービーホールカット諦めたんです
ネックだったのは価格
私が最初に書いて送ったデザインは踵で革を継ぐにもかかわらずいっさい継ぎ目のないリアルホールカットと同じと言われたんです(リアルホールカット高いんです!)リアルホールカットとかかる手間は一緒だからと...
格好いいんですが商品化するには価格も非常に重要です。何とか通常のサンクリスピンシューズの価格に近付ける事は出来ないかと、ここからディスカッションが始まります
職人とメールをやり取りする事10往復以上
やっぱり無理か?よし気持ちを切り替えて違うデザインを一から考えよう
そう思った矢先
最後に書いて送った絵の何が刺さったのかクリスチアナからサンプルを作ってみると返事をもらいました
ここから急展開、次の日にはサンプル作成に取り掛かり成功
価格面も合意、商品化する事となりました!!
デザイン的に難色を示されたのは最大の特徴であるやっぱりここ
当初、ここに革の切り替えしを作りフラップ式にすることで価格面は解消できるとの回答でした
しかし私の中の定義としてここに継ぎ目がない事がホールカットであるとの認識だったんです
ここに継ぎ目を設ければそれは外羽根のプレーントウ(それはそれで好きですがベーシックなプレーントウですね)
何か抜け道はない物かと色々職人に聞いていきますが、価格を抑えるには羽根をフラップ式にすることが前提との回答でした
私はここで発想の転換をします
サンクリスピン数々のモデルの羽根の継ぎ目を見比べていて思いつきました
ホールカットをダービーにするのではなくて羽根に継ぎ目のないエプロンダービーのエプロン部分を極限まで縮めてプレーントウにしてやろうと!!さすればホールカットになるではないか!!
結果出来上がったデザインがこの広めのタン部分という訳です
そのヒントを得たエプロンダービーの継ぎ目にたまたまパーフォレーションが付いていたので折角の継ぎ目だから装飾を凝らそうとパーフォレーションを
ディスカッションの末、捻りだされ結果生まれたのがこの独特の面構え
ホールカットには継ぎ目がない分装飾を付けにくいです。ホールカットにある装飾といえば、代表的なのはつま先にメダリオンですね
その他踵にワンポイントアザミくらいですか、限られた場所の装飾となります
ですがタン部分に大胆なカットの革切り返しがくる事でパーフォレーションを自然に取り付け可能となったわけです。
結果、靴という限られたキャンバスの上に新しいバランス、穴飾りはあるのにホールカット(プレーントウ)という稀有なデザインが出来上がりました
決して奇抜にならず、しかしシンプルな中に特別感を宿すSaint Crispin’s Derby whole cut
ここに完成
価格 ¥298,100 (税込)
素材 Shrunken Calf Leather
色 Midnight Blue
底材 Single leather sole+Higher heel, plus 4mm, Cuban style
製法 Hand sewn welted
ウィズ F
実は、デザイン完成から商品化までまだまだ手は緩めてません
サンクリスピンマテリアルリストにない(廃番になった)革で何か使える革ないですか?
ダメもとで聞いてみましたが、聞いてみるもんですね。出てきましたシュランケンカーフ
最初からシボ革を使おうと考えていたので即決
黒を考えていましたがミッドナイトブルーがあり、ほぼ黒に見えるけど比べると何か違う感
これウチっぽいなと思い選びました
そして最後の最後に
折角の革切り返しだからパーフォレーションを取り付けたタンの根元と同様
踵の切り替えしももったいないからパーフォレーションを
このアンバランスが組み合わさってバランスをとるのが当店の真骨頂でございます
今までにないデザインですが決してくどくはないと思います
ホールカットです
ダービープレーントウです
さり気ない違いをコーディネートに加えてお楽しみください