■ SAINT CRISPIN’S — ビスポーク思想から生まれた靴

Saint Crispin’s の起源は1980年代半ばに遡ります。 靴デザイナーであった マイケル・ローリック氏 は、既製靴とビスポーク靴の間に存在する決定的な品質差に疑問を抱いていました。

高級既製靴は外観の完成度は高いものの、足への適合は限定的である。 一方、ビスポーク靴は理想的ではあるが、価格と製作期間の面で現実的とは言えない。

当時、この両者の中間に位置する本格的な選択肢はほとんど存在していませんでした。 そこで、 「ビスポーク級の品質を既製靴として提供できないか」 という発想から、Saint Crispin’s の構想が生まれます。

1992年にはオーストリアにてブランド名が正式に登録され、会社が設立。 ドイツやイタリアの顧客に向けてビスポーク靴の提供が開始されました。

■ ビスポーク由来の既製靴

Saint Crispin’s の既製靴は、単なる高級既製靴ではなく、 ビスポークの思想と技術を基盤として設計されています。

既製靴でありながら、 ハンドソーンウェルト製法 精密に設計されたラスト 手作業中心の工程 立体的な成形と仕上げ を採用し、既製靴とビスポークの中間ではなく、 ビスポークの延長線上にある既製靴として位置付けられています。

■現在の体制(ウィーン × ルーマニア)

2003年には、パートナーとして フィリップ・カー 氏が経営に参画し、 現在の生産・管理体制が確立されました。 企画・設計・ショールームはオーストリア・ウィーンに置かれ、 製作はルーマニア・ブラショフの自社工房で行われています。 年間生産数は約1,500足と極めて限定的で、 品質維持を最優先とした少量生産を貫いています。田中十靴店では靴のデザイン、パターン制作等、商品企画自体をルーマニアの職人と直接話し合う事で当店独自の世界観を持ったSaint Crispin’sを生み出しています。

■なぜ世界中の専門店が扱うのか

Saint Crispin’s は、華やかな装飾や知名度によって評価されるブランドではありません。
構造、履き心地、耐久性といった靴の本質そのものを重視する人々に選ばれる、極めて専門性の高い存在です。

その造形は、クラシックシューズが本来持つ構築的な重厚さを基盤としながら、東欧で唯一といっていいラテン民族ルーマニアの職人特有の艶やかな色気と、東欧的な力強い存在感を併せ持っています。

流行や過度な装飾に依存することなく、精密な設計と立体的な成形によって成立する独自の美しさ。
この普遍的で揺るぎない価値こそが、世界各国の専門店や愛好家から長年にわたり高い評価を受け続けている理由です。

■田中十靴店が取り扱う理由

田中十靴店では、既製靴でありながらビスポークに迫る設計思想と、長期使用に耐える堅牢な構造を兼ね備えた靴としてSaint Crispin’s を高く評価しています。

とりわけ、クラシックな重厚さに加え、ルーマニアの職人による手仕事がもたらす独特の色気と迫力は、既存の西欧靴とは異なる魅力を持ち、当店が提案する系統に囚われないクラシックスタイルとも強く共鳴します。

さらに、ルーマニアの職人と直接ディスカッションを行うことで、当店独自のデザインや仕様の開発が可能である点も重要です。

店頭展開モデルに加え、当店取り扱い外のモデルについても受注生産を行っており、お客様一人ひとりの要望に応じた柔軟かつ本格的な提案が可能です。

単なる既製靴ブランドとしてではなく、長く愛用できる本質的な一足を提供する存在として、田中十靴店は Saint Crispin’s を取り扱っています。