最初はこの靴の色に合う紐を作ってみようかな?が始まりでした。
当店のサンクリスピンの黒は手染めのパープルを極限まで黒に仕上げてもらったブラキッシュパープルというお色。
どうせなら靴の色を取り入れた紫がかった紐を作ろうと。
そこで、パッと浮かんだのは着物などには欠かせない色んな色が混ざった組紐だったんですね。
実は、組紐のシューレースは前々から存在します。でもどちらかというと丈夫さの方を謳った商品でした。
当店では紗乃織靴紐(さのはたくつひも)の蝋引き平紐をご用意しております。
こちらは蝋引きでしっかり目の詰まった風合いある紐です。昔から好きで自分でも使っています。
ただ、私は全く違う角度、組紐独特の和の色に着目した訳です。
京都の組紐屋さんにコンタクトを取りました。
「あほなこと言うな」みたいなトンチンカンな依頼かも!?とドキドキしましたが、突然の相談にもかかわらず丁寧にご対応いただき感謝の限りです。
サンプル依頼
まずはイメージを伝える為に実際靴を持って行ってどんな紐を作りたいのかの打合せ。
私のイメージはアクセントとなるカラー紐ではなく、あくまでも黒紐として使える事。
話は飛びますが、昔近所の祭りで、かき氷にイチゴとメロンとレモン、赤、緑、黄色のシロップ全部かけてみたことがありますドス黒い色のかき氷になった事を覚えています。
色んな色の糸、対照的な色をぶつける事でドス黒い紐が出来ないか?しかも黒糸を使わずに。
綺麗な色の組み合わせが特徴の組紐。要は敢えてきたない色を作ろうと言う訳です。最初はそんな感じのイメージでした。
失礼かな?という提案も「面白いですね」というお言葉を頂き、その場で色を選定。
当初のブラキッシュパープルに合う紐という事で紫は使おう。それをどうやったら黒に見せられるか?
ここから色の迷宮に迷い込むわけです。
糸の色が溶けて混ざり合う訳ではないので黒に見せるには黒糸は使わなくては無理と言われ、じゃあ黒と紫、あと何色を使おう。出来るだけかけ離れた色を使う方がいいかな?
実は組んでみないと全体がどんな色合いになるかはわからないんです。なので取り合えず目安となる紐を組もう。
出来たのはこちら
緑を足しました。
全く黒じゃない。
これはこれで格好いいけど…
最初は全くかけ離れた所からのスタートでした。
他にも青っぽいのやら、完全なる紫やらカラフルなサンプル紐が出来ました。
この時点で黒と紫糸のみを使う事に決めました。
実は欲が出てきまして当店のサンクリスピン、ブラキッシュパープル色以外の黒靴にも使える紐にしてみようと。
ここから黒糸と紫の配分、そして紫自体の色のトーンを変えて試行錯誤。
まさに迷宮。ちょっと心が折れそうになりました。
実は、紐単体で見るのと、実際靴に付けて見るのとでも雰囲気が違うんです。
黒靴に付けて見るとやっぱり紫が強い。なんて事の繰り返しでした。
糸一本、二本の世界
どうしても紫の紐になってしまう。
とうとう紫糸自体を変えようと言う事になり、より暗いトーンの紫糸を取り寄せてもらいました。
そしてようやく仕上がったのがこちら
黒です。黒っぽいです!!
画像ではお伝えしにくいです。何ならこの時点では田中十靴組紐の方が黒く見えるくらいですね。これが靴に巻くと違うんですよ~
変化の付けにくいストレートチップに敢えて付けてみました。
黒紐と言われれば黒!?くらいの色味。
でも黒紐と並べるとちょっと違う。
黒と言われれば黒、でも普段とちょっと違う。その位を目指した結果このトーンに落ち着きました。
実際、あとちょっと紫の糸が増えただけで紫紐になるんですよ。
主張し過ぎず一人ほくそ笑むバランスに仕上がったと思います。
正直インパクトないです。分かりづらい物作ってしまったな~という思いもありますが、奥ゆかしい靴紐、付けてる本人が気持ち豊かになる靴紐を目指した(つもり)
満足いく靴紐に仕上がりました。
田中十靴組紐 75センチ(5~6穴用) 価格¥2,200(税込)
(紐先、金ゼル使用。当店で加工致します)
長くなりました。素材や組み方についてのお話もありますが今日はこの辺で。
後編につつく