• これやからSaint Crispin’sはやめられへん 其の十

    Saint Crispin’s U-CAP SWAN NECK, 3EYELETS DERBY

    独特の湾曲を描く外羽根(通称マカフィーカット)に流れるようなUキャップをウイングチップの代わりに付けたら

    格好いいだろうなという思い付きから生まれました。

     

     

    Saint Crispin’s U-CAP SWAN NECK, 3EYELETS DERBY ¥297,000 (税込)

      • 素材 Shrunken Calf Leather

      • 色 Medium Brown

      • 底材 Norvegese hand stitched leather sole to ball+ heel (10mm leather sole)

      • 製法 Hand sewn

      • ウィズ F

    ※木型に沿ったハンドメイドシューツリー付属しております。
    価格はシューツリー込の価格です。

    このデザインは2021年、田中十靴店を立ち上げてまだ実質2年目の年にサンクリスピンに依頼して作ってもらったデザインです。

    このモデルが当店のデザイン(パターン)自体から製作してもらう、もはや実験のような試みの第一号です。

    当初はデザインサンプルという形で自分のサイズを一足だけ作りました。それをご購入頂いたため物自体がない状態でしたが、

    今回特徴ある底周りはそのままにアッパーにシュランケンカーフのミディアムブラウン、メダリオンを違うパターンに変更して

    New Release!

    もろに余談です。

    前職時代、ちょこちょこ色んなメーカーさんに自分で企画したデザインを作ってもらったりしたことがあるのですが

    (気合で企画を通す!)、実はデザインから作る事は中々出来る事じゃないんです。

    デザイン、いわゆるパターンをおこすのであればそれなりの数を注文する事が条件となり、規模の大きいメーカーであれば

    それを満たす数は結構なものです。そしてイレギュラーな注文には、ある程度の規模のメーカーになれば生産ラインを考えると

    難色を示します。それはそのままある程度の大きな取引をしている規模感の靴屋でなければ出来ないとなります。

     

    アッパーマテリアル:シュランケンカーフ、この革はサンクリスピンの革リストにもありません。なんかない?と聞いたら出てきました。

    そんなこんなで中々デザインからは作らないんですが、サンクリスピンというメーカーは世界的にも稀有なメーカーです。

    まずハンドソーンウェルトという手でウェルトを掬う製法により靴を生産しています。当然機械生産メーカーより数は作れません。

    ですが非常に小回りが利きます。

    既成靴メーカーでありながら一足から注文を受けて生産する注文靴メーカーという側面もあります。

    こうなるとどこからが既成でオーダーなのか非常に曖昧ですがとにかく稀なメーカーなんです。

     

    17パターンあるメダリオンの中からこのモデルに合うだろうメダリオンを選定

    注文靴を一から形にするメーカーであり小回りが非常に利くが故、逆に注文する側は自分のイメージした靴を作り上げる為

    何が出来て何が出来ないのか非常に細かい仕様を把握する必要があります。

     

    マカフィーカットと呼ばれる大胆なカッティングの3穴外羽根

    田中十靴店では有難いことに、生産しているルーマニアの職人と直にやり取りさせてもらってます。

    色々相談する事によって独自のデザインや仕様を実現しています。

    (ホンマに絵を描いてそれを実際靴の形にしサンプル作ってもらったりしてます)

     

    デザインに合わせてヒールにボリュームを持たせるためノルベジェーゼハンドステッチ指定

    更に話は脱線。

    世の中には別注モデルと呼ばれる靴が多いですが、それは元々あるモデルの革を乗せ変えたりソールをいじったりしているモデルがほとんどです。他にない特別感あるモデルをご紹介する為、私も色々メーカーに依頼していますが私たちセレクトする側からすると靴をメーカーに注文する際、それは毎度行っている事なので実は行ってること自体はそんなに特別とは思っていないんです。

    (これを言い出すと全部別注という事にもなりますね)

     

    前半分ノルベジェーゼハンドステッチ。ソールの厚みは10ミリ指定でナチュラル色のコバ。

     

    ウエストは敢えてハンドステッチを掛けず括れを強調。サンクリスピンらしい木のペイス留め

     

    ヒールにまたノルベジェーゼハンドステッチでボリューム感を 前半分ノルベ、ウエストなし、ヒールノルベの当店独自仕様です

    私たちはメーカーにある在庫を買っていると思われている方もおられると思うのですが、実はメーカー大抵は在庫持ってません。

    メーカーに注文する際はデザインサンプルを見て、じゃあこのモデルでこの革を乗せてソールはラバーソールでこんだけの数こしらえて等々、こちらから指定してメーカーがそれを承諾してくれてはじめて注文、そっから生産に取り掛かるという訳です。

    話は戻りますが、デザインを一から作るという事は素材やソールを変えるいわゆる別注とは根本的にちょっと違います。

    靴を形作る為のパターンを作ってもらうという事です。先にも書きましたがやってくれるメーカーは希少ですし結構やる側にも

    勇気がいります。(パターン作成代もかかりますし)

    だからどうなん?という話なんですが、 ちょっとでも他と違う、人と違う、尚且つ格好いいと思える靴を作りたいという思いでやっています。

    そんな経緯があり、当店では他ではお目にかかれないデザインのサンクリスピンが揃えられるという訳で、今後も田中十靴店の

    フィルターを通したルール内にありながらその中でちょっとした特別感のある靴を企画しご紹介できればと思います。

    画像と話が全くリンクしておらず申し訳ありませんが、私の独り言だと思って何卒ご容赦ください。

    モデルの仕様について詳しくは2021年に一回書いてますのでそちらもよろしければご覧ください。

    詳しくはこちら

    【相当な独り言】

    今回ご紹介のSaint Crispin’s U-CAP SWAN NECK, 3EYELETS DERBY、一見カントリーシューズの部類に分けられそうですが

    しっかりドレッシーです。スーツスタイルのシルエットを壊すことのないバランスに仕上げておりますので

    是非スーツスタイルにコーディネートしてみてください。

    そしてそこからのドレスダウンは非常に行いやすい仕様の靴かと思います。

    靴単体で見た時ドレッシーであるかカジュアルであるかの違いはただ一点ここだと思っています。

    カジュアルなシューズの一例としてカントリシューズを挙げますが綺麗めのジャケットスタイルに合わせられても

    スーツスタイルには不向きです。極端な言い方になりますがドレスアップは出来ないんです。

    ドレスシューズはスーツスタイルに合わせる事が前提になります。

    カジュアルなシューズとドレスシューズの明らかな違いはそのシルエットです。

    無駄のないスーツスタイルに合わせるには無駄のないシルエットの靴をという事になります。

    今回ご紹介のSaint Crispin’s U-CAP SWAN NECK, 3EYELETS DERBYもノルベジェーゼハンドステッチながら

    コバの張り出しは広くなくスーツスタイルのシルエットを壊しません。

    さてここからですが、こういったドレスシューズはドレスダウン出来るんです。

    しかも今回の靴は適度にボリューム感を持たせている為ドレエスダウンは想像するに容易となります。

     

    フォーマルかそうでないか?という事になるとまた別次元の話になります。

    フォーマルな服装は厳密にいえばルールであり何着るか履くかは全て決まっています。

    (そんな決まり事を守るフォーマルな場には私なら天皇様に会う機会がない限りしないですが)

    フォーマルの対義語はカジュアルではなくインフォーマルです。

    カジュアルはインフォーマルの一部になります。

    こんな事をゴチャゴチャ考えていると、自分が普段している格好はスーツスタイルも含めて

    全てインフォーマルなんやとなるわけで、なんだか不思議と力が抜けて自由な発想で革靴履こうとなるわけです。

    先にも書きました、順序だけ

    • ドレッシーな物はドレスダウンできる
    •  
    • カジュアルなものはドレスアップ出来ない(限度ある)

    ここさえ押さえておけば、革靴はこうでなければ的な呪縛から解き放たれますし、カチッとした服装でも、ラフな服装でも、更に楽しく革靴と付き合えると勝手に思っております。

    Saint Crispin’s U-CAP SWAN NECK, 3EYELETS DERBYで是非お試しください。

  • これやからSaintCrispin’sはやめられへん 其の五 デザイン編

    私も靴に携わって結構長いので、これは出来る、これは無理、これ出来そうは大体わかります。

    なのでこれ出来る、出来そうは職人に確認し大体実現してきちゃいました。

    部分的なパターン変更は勿論、通常オーダーでは指定が中々難しい事が当店では可能です。

    そしてついには靴のパターン、デザインを作ってもらうようになりました。